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[vsolj-news] vsolj-news 241: New Cataclysmic Variable in Pegasus
Subject: vsolj-news 241: New Cataclysmic Variable in Pegasus
VSOLJ ニュース (241)
ぺガスス座で明るい新矮新星が増光
著者 :山岡均(九大理)
連絡先:yamaoka@phys.kyushu-u.ac.jp
夜半過ぎに昇ってくるぺガスス座で、8等台のやや明るい新天体が見つかり
ました。連星系内の白色矮星に落ちるガスの円盤が急激に明るくなる「矮新星」
の一種で、数年に1度程度しか明るくならない種類のものではないかと推定さ
れています。発見したのは、韓国の李大岩(イ・デアム、Dae-am Yi)さんで、
昨年には彗星C/2009 F6 (Yi-SWAN)を発見された活発な天体捜索家です。また、
静岡県掛川市の金子静夫(かねこ しずお)さんも、この矮新星を独立に発見し
ています。
李さんは、5月6.77日(世界時、以下同様)に一眼デジタルカメラに93mmレン
ズを用いて撮影した2枚の画像に、10.8等級の見かけない天体を見つけて報告
しました。翌7.76日に李さんが400mm望遠レンズを用いて撮影した確認画像で
は、この天体は8.4等まで明るくなっていました。また、金子さんは7.787日に
80mmレンズで撮影した画像でこの天体(明るさ9等ほど)に気付きました。山形
県山形市の板垣公一(いたがき こういち)さんが、8.657日に60cm望遠鏡を用い
て撮影した画像(天体は8.8等ほど)で測定した天体の位置は、
赤経 21時38分06.66秒
赤緯 +26度19分57.1秒 (2000年分点)
でした。
この位置には、15等ほどの暗い星がありました。板垣さんが5月1.71日に撮
影した画像でも15等ほどで見えており、そのときにはまだ増光は始まっていな
かったことになります。また、この暗い星は天球上の動きである固有運動が大
きいこともわかり、私たちにかなり近いところにある天体であると推定されま
す。さらに、この天体は以前からやや強いX線を放っていることもわかりまし
た。天体の色も考え合わせると、どうやらこの天体は、連星系内の白色矮星に
落ちるガスの円盤が急激に明るくなる「矮新星」の一種であろうと考えられま
す。
そして、分光観測の特徴や、0.1等級程度の明るさの短時間変動が報告され、
この天体はどうやら、矮新星のなかでも、数年に1度ほどしか増光しない、希
少なものであることがわかってきました。今後、数週間程度はこの天体は増光
状態にあると思われ、詳細な観測から、この天体の素姓が明らかになっていく
ことが期待されます。
参考文献:CBET 2273 (2010 May 8)
CBET 2275 (2010 May 8)
2010年5月9日
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